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東直子インタヴュー⑤紫の帽子

#art#文学#絵画

・遠くから見ているからね紫の帽子を被って走りなさいね

 の一首。
 現実としては、かほりさんのお兄様が幼稚園ですみれ組だったそう。
 ただ、やはりここでも「大人になってからの母の言葉、遠くが死後の世界」などという読みが発生する。
 「発想は運動会ですけど、もう少しイメージを広げたいところはある」という東さん。
 この歌の成立要件は「紫」で、これが紅白だったら幼稚園か小学校の運動会の実景に留まってしまう。

 ここが東直子の面白いところで、読者としては「どちらもイメージ」「後者が実景」など、複数の東直子像が浮かんできて、確かに生活詠なのだが、どれが本当の生活かわからなくなるのだ。

・終バスにふたりは眠る紫の<降りますランプ>に取り囲まれて 穂村弘
・大空の斬首ののちの静もりか没(お)ちし日輪がのこすむらさき 春日井健

 など、秀歌における紫の使用は多いが、ここまで実用的に機能させられている「紫」はあまりないのではないだろうか。
・夜が明けてやはり淋しい春の野をふたり歩いてゆくはずでした

 の一首では、「やはり」が上と下のどちらに掛かっているのかが話題に。
「やっぱりどちらにも掛けたいんでしょうね。広がりを持たせたい。それも一つの技法だと思って、一度、他の人の上にも下にも掛かっている作品を探してみたことがあるんですけど、無かったんですよね」
 とのこと。

 あと、鳥はナチュラルにお好きなのだそうです。


... to be continued

この記事の著者

田中 悠貴

1983年12月16日生まれ。慶應大学総合政策学部、福田和也研究室卒業。建築業・ビル業に従事する傍ら、アートイベントの運営に携わる。以降、暮らしや生活、文化の向上を目指し、株式会社ANTI-ICONを立ち上げる。

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