株式会社ANTI-ICON誕生!
建築物が好きだった。
建設業、ビル業を経営する父の影響だと思う。もちろん、今でも好きだが、街について考えた時、再開発によってなくなるものが気になっている。
例えば、公園がなくなり、児童が高架下で遊ぶ街がある。
道路の拡張で、趣味の良い中華料理店からチープなチェーン店になった場所がある。
有名作家の遺作だというだけの理由で、壁一面に展示されてしまった駅がある。
つまり、街を経済的に発展させる対価に、失うものがあるわけだが、それは空間や文化だけではないと思うようになった。ここで難しいのは、集客力のあるアイコンであれば、文化でさえも高度資本主義的発展に入り込めてしまうことだ。そして、それこそが文化なのだと、既存の文化にとって変わってしまう。
現に、一般に「アート」と言えば、投機目的の現代アートが連想されてしまうだろうし、カルチャーと言えばサブカルチャーかストリートカルチャーが連想されてしまうことだろう。それは、市場がbanksyやkyneを生み出し、Supremeがタイソンやケイト、ラリー・クラークやkawsら時代のアイコンを取り上げ、自らのロゴさえもストリートのアイコンに定着させたからだろう。人々は競って新しい投機対象(もはやビットコインと変わらない合図、アイコン)を探し、また同じアイコンを纏った文化にすがっている。
本当に失ってはならず、失われてしまうもの。それは、「文化的リテラシー」とでも言うべき、生活者の質そのものなのだと思う。これは美術館を創ったりイベントを開いたりして解決する問題ではないのだ。
場所のブランディングイメージや作家のネーム、土地や文化の市場価値を担保する目的で作られた「ICON」に左右されない、本来の生活の美しさ。人間の美しさ。もっと身近にある美しさ。
そんなものを取り上げることこそが、失われてしまう「文化的リテラシー」の向上に繋がるのだと一念発起し、「ANTI-ICON」という名で株式会社を創った。
今はまだ、何でもない、社員もいないベンチャー企業という立場。これから、shop(ANTI-ICON.shop)、blog、YouTubeなどを使い、自分の思いや作家の思い、様々な立場を伝えて行きたい。
このlogは、そんな会社のスタートからの、ドキュメントログである。
株式会社ANTI-ICON
代表取締役社長
田中悠貴