建築とアートに関して①
SANAAの妹島和世氏が、2023年7月1日付で目黒の東京都庭園美術館の新館長になられた。 このこと自体は、東京都民として非常に喜ばしいニュースなのだが、実は、庭園美術館でしっくり来る展示を観たことがない。 原因を考えてみると、庭園美術館はその意匠自体が作品性を多く含有しており、通常の美術館のように「地」になっていないのだ。 つまり、どのような展示であれ、「図」と「図」の関係になってしまい、どちらが観るべき作品なのか区別が付きづらい。
このような例からも、私は、全てのアートは建築物に依存していると考えている。 例えば、日本の茶室における総合芸術は、そこにそれぞれ納まりうるサイズが規定されており、ホワイトキューブのサイズとコンセプトに耐えられる文化的素地がない。 (更に言えば、日本は地震が多いため、大型のホワイトキューブの建設に向かない。耐震基準を満たそうとすると、柱や梁をはじめ、大きな四角柱空間を邪魔するものがたくさん現れるのです。) このことを考えると、海外の巨大なホワイトキューブ内に、組み立て式の茶室を持ち込んだ内田繁氏の提案は、実はかなり革新的だったのではないだろうかと今更ながら痛感する。