東直子インタヴュー②てのひらにてのひらをおく
歌人の仕事場に対して、何故か漫画家が描く漫画家のアトリエのようなイメージを持っていた私は、近所の安アパートを探していて、少し遅刻してしまった。 そんな私を、東さんはめちゃくちゃちゃんとしたアットホームなマンションの一室でアットホームに迎え入れて下さったものだから、なんだか緊張してしまった。 今回写真を撮って頂いた、娘の東かほりさんもいらっしゃって、音声録音をお願いしたアシスタント(実父)と共にキョドキョドするばかりだったのは申し訳ない。 なにせ漫画家が描く仕事色の強い漫画家のアトリエとは程遠すぎて、居ること自体が憚られてしまうような気持ちになっていたのだ。 (ていうか漫画家はちゃんと実態通りに描いてるのか?ほんとは結構アットホームだったりするんじゃないのか?)
ご挨拶と、それから撮影映え用に、「こういうものを扱っています」と五つのコップを出す。しかし、東さんも冷たい麦茶をご用意してくださっていたのでしばらくごちゃついてしまった。(要するに私は結構な時間キョドッていたわけだ) 東さんは陶芸教室にも通っておられるので、コップの焼き方や釉薬に興味がおありのご様子だった。 かほりさんもいらっしゃったので、もう一度ANTI-ICONの説明をしつつ、日本が日本国のテイをなしてから(一応)完全な侵略は受けていないこと、そのため1200年以上続く文化がある中で、それらを再開発に侵される都市生活者にとっての、もっと身近な依べにしたいということ。 短歌もそのうちの一つだが、昔の口伝性の喪失や、一首を文字として飾る機会の減少はどういった原因が考えられるのか、実際に飾るものとして描いてみて、詠み手としての思考や心情をお聞きしたかった、という、企画の裏趣旨をご説明させて頂いた。
「まず、色紙に絵を入れる事はあっても、絵に文字を入れるという経験がなかった。絵と短歌が説明しすぎちゃうとお互い狭めてしまう気がするので、短歌のニュアンスを広げつつちょっと違う世界の絵を描いた。というより、描きたい絵が先にあったものもあった」という東さん。
まずは “てのひらにてのひらをおくほつほつと小さなほのおともれば眠る” の一首。私は自分のてのひらを重ねるイメージをしていたのだけれど、 「子供って、眠りに落ちる寸前に身体があったかくなるんですよ」 という、かなり実景に満ちた作品とのこと。(※twitterでも言及されていらっしゃいました) 「だから、眠った瞬間、ほのおが点ったようだ、という歌。それが、蓮の花のようだ、という(絵画作品)」 ここまで聞いて、私は意外に感じる部分があった。東直子という歌人は、もっと精神的イメージが先立った生活詠の人だと思っていたからだ。 「実体験が必ずあります」 という姿勢自体が意外だったのだ。 ... to be continued