東直子インタヴュー④閑話
東直子は間違いなく時代の寵児だった。 吉本隆明をして「1,200年の短歌史における頂点」と言わしめた塚本邦雄、岡井隆両氏がご存命であり、現役であった中、俵万智が一般に売れている傍らで、穂村弘、加藤治郎らと共に「ニューウェーブ」と呼ばれる短歌の現代化を推し進める波の中心にいた。 「断言できるが、この二十年間(※1)の口語短歌でもっとも影響力が大きかったのは東直子の文体だ」(※1・・・2000年〜2020年を指す) という瀬戸夏子氏の証言の通り、「文体」を主戦場にしたのは、またできたのは、ニューウェーブの中では彼女だけだった。 俗に「万智調」と言われる俵万智ですら、その訴求力は乏しかったように思う。 ①実生活の実際の体験を核とし、 ②その中に複数の意味とリズムを込め、 ③幻視の様なものを作り出す。 今回のインタヴューで判明した、①~③の制作順こそが、この、「文体」の正体なのではないだろうか。