東直子インタヴュー⑧現代短歌入門
これまでに挙がったお名前や時代性の話をしていると、東さんから「もうやりようがないというか」というご発言が。
「いや、みんなそこを頑張っているんですけど、微差を競っているというか。物語性にいく人もいるし、メッセージ性に行く人もいるし、言葉のフェチみたいな人もいるし。」 「コンテストなどは連作が多いようですが、一首の屹立性は目指さないのですか?」 「いや、個人では目指しているのではないですか?愛唱歌が生まれて、その歌人の特性になると良いんだと思うんですけど...」 私は、斉藤斎藤氏の『渡辺のわたし』以降の短歌で暗唱している作品が異常に少ない。 これは近代のような一音も動かない(代替不可能な)作品が減っているからではないだろうか、と問うと、「口語の限界がきているのかもしれませんね。逆に文語の人が増え始めた印象があります」という。
「では逆に、短歌を知らない人にいまオススメの歌人や短歌はありますか?」という問いには、 まぁ好みがありますからね、という前置きと共に 「ちょっと前までは前衛の3人(多分、塚本邦雄、岡井隆、寺山修司の3人)は押さえとこうよっていう感じだったんですが、それを読んだとすれば、或いはこれから読むなら、アンソロジー(選集)じゃないですかね。そこから好きな人を探していくという」
「ニューウェーブの歌人たちは、誰の影響を受けているか分かりやすかったし明言していたから、歌集が入門書になり得た。歴史の文脈を辿れた」 と言うと、 「そうですね。確かに、斉藤斎藤さんや永井裕さんは誰の影響を受けたか言ってない。そこが歴史と切り離された感じになっちゃってるのかも知れませんね」 と仰った。 ... to be continued